学名:カメリアシネンシス 和名:チャノキ
ツバキ科の常緑樹
日本で栽培・製造されたものを日本茶と呼びます。
特に摘採後、速やかに蒸し、揉みながら乾燥させたものが 日本では一般的で、 この製法のお茶は「Japan Tea」として海外でも広く知られています。
国内における産地は静岡、鹿児島、京都、八女などが挙げられますが、 東北以北以外はほぼ 全国で商業用に栽培・製造されています。
お茶葉1200年ほど前から、中国から渡ってきたと謂われていますが、 諸説あるようです。
かつては薬としての側面が強かったお茶ですが、 時代の変遷と共に嗜好性が増し、
各地で様々な製造方法が生まれていきました。
日本での特異性としては抹茶の製法及び それに伴う蒸し製のお茶の製造がユニークです。
鎌倉時代に中国から入ってきた製法が独自に進化していき、 現在の製法にいたります。
蒸し製の煎茶が江戸時代に成立したとされていて、 製造の機械化・品種改良により、産業として確立されていきます。
現在では、様々な製法・品質・品種のお茶が嗜好品としても楽しめる様になっています。
いわゆる緑茶・日本茶と言ってイメージするお茶です。
栽培したチャの葉を摘み取り、蒸して揉んで乾燥させたもで、 全茶種の中でも最も栽培・製造されている種類のお茶です。
そのため産地や作り、品種による差異が際立ちやすく、 全国で様々な煎茶が作られています。
一般的に流通するものは4・5月に摘み取られたその年初めてのお茶で、 一番茶と呼ばれるものです。
6月頃に二番茶、その後三番茶と呼ばれるお茶が摘み取られます。
二、三番茶は番茶と呼ぶこともあり、 ペットボトル原料や業務用茶・ティーバッグに利用されることが多いです。
簡易に覆いをして、色味を深めたり旨みを深めたりするものもあり、 冠せ茶に寄せた作りのものもあります。
茶樹に化学繊維のネットを直接覆い冠せ、1〜2週間経過させた緑茶です。
玉露ほどではないですが強い旨みを保持し、水色も青みがかってきます。
青海苔のような特有の香気成分があり、コクを楽しむことができます。
お茶は光合成することで葉内のアミノ酸がカテキンに変移していきます。
アミノ酸は旨味成分で、カテキンは苦渋味の成分です。
日光を遮られているので葉は大型になり、 繊維質になり、固く仕上がります。
製造の過程で形を残し、よく撚られた冠せ茶は葉の開きが緩やかで、 葉の表面にある旨味を丁寧に抽出することができます。
濃厚な旨みを乗せるには非常に相性の良いお茶です。
被覆茶特有の出汁感のあるアミノ酸の味わいが楽しめます。
茶畑を囲うように棚を作り、藁や葦簀で日光を遮って栽培するお茶です。
16日以上で平均20日前後の日数をかけて遮光し、 最終遮光率は95%を超えます。
自然仕立てと呼ばれる樹形を作り、手で摘むことが多いです 。
手摘みの場合は茶刈り機を使わないので、 弧状の茶畑ではなく一本一本の木の形が残った状態で育てます。
覆い香と呼ばれる青海苔様の特有な香りがあり、 葉は薄く大型に、また深く鮮やかな緑色を呈します。
非常に旨みが強く、雑味のないものが良品とされています。
主要産地は京都と八女ですが、 それぞれで作りや特色が違うため飲み比べるとはっきりとした差を感じることが出来ます。
玉露と同じように茶畑を囲う様に棚を作り、20日ほど日光を遮って栽培します。
玉露と違うのは、蒸してから揉まずに乾燥させる点です。
煉瓦造りの炉の中で160℃程度の 温度(工程によって幅はあります)で乾燥させます。
乾燥できた茶葉は碾茶(てんちゃ)と呼ばれ、 それを更に石臼で粉砕したお茶を抹茶と呼びます。
古くからある製法で、時代と共に変化してきました。
苦みを抑える為に遮光をし、香りを活かす為に熟成させたりと 様々な工程を経て製品ができあがります。
発酵茶半発酵茶を含めた、お茶の分類一覧です。
600年ほど前にお茶の種と製造方法が持ち込まれ形成された産地です。
福岡県南部に位置していて、全国では6〜7番目の生産量を持ちます。
八女伝統本玉露に代表される旨みの強い被覆茶を特徴としています。
全国的にも高級茶として知られ、 少量生産ですが品質の高さを重視しています。
特に奥八女と呼ばれる山間地では、 玉露や抹茶なども栽培・製造されています。
各所で棚田に茶畑が連なる景色も見ることができます。
大分との県境に位置する星野村では特に伝統本玉露の栽培が多くあり、 全国茶品評会 玉露の部において、 一等一席を獲得する生産家が多いです。
23年連続で、玉露産地賞を受賞し続けている産地です。
土地や気候もさまざまで、 八女の中でもたくさんの特徴のあるお茶があります。
お茶にも様々な品種があります。
有名なものは【やぶきた】という品種があり、こちらは全国で60%強の栽培面積があります。
研究開発の成果があり、登録される品種は増え続けていますが、 現在、130種類ほどの品種が登録されています。
寒さや病気、虫への耐候性・収穫量など機能性も重要視されますが、 味や香りにも特徴が認められます。
桜の葉の様な香りがある品種や枝豆のような香りがある品種、 ふかしたさつまいものようなほくほくとした香りがある品種など様々です。
品種の特徴は香りによく出るのですが、 全部が全部、特徴的というわけではありません。
品種の特徴を捉えることも楽しみの一つです。
急須でお茶を淹れる方法を淹茶法(えんちゃほう)といいます。
お湯を使用して、乾物としてのお茶からどのような味香りを引き出すのかを
考えます。
お茶は葉自体でも特徴がありますが、淹れ方でも特徴が大きく変わります。
大ざっぱに言えば、 低温で淹れれば苦みが出ず旨味を楽しめる味になります。
高温で淹れれば苦みと香りが立つ味わいになります。
お茶を淹れるシチュエーション、相手、体調に応じて 最も合う淹れ方をすることで、お茶の魅力は何倍にも膨らみます。
淹れ方には様々な理屈がありますので、一様にはいきません。
葉の開きを見ながら淹れていくことで、解像度が上がります。
飲みだけではなく、淹れること自体も楽しめます。
淹茶法を行うために必要になる道具です。
取手と注ぎ口の付いた横手のものが一般的ですが 形状には様々あります。
愛知県の常滑(とこなめ)が最大産地となり、 かず多くの職人が急須を製造しています。
胴体・取手・注ぎ口・蓋・茶漉しの各パーツを 轆轤(ろくろ)や鋳込(いこみ)で作成し、 組み上げて焼くことによって作られます。
焼き物の中でも特に手間のかかる道具で 急須職人がいる産地は少ないです。
代表的な産地は常滑焼と三重県の萬古焼(ばんこやき)です。
急須は道具ですので、用途によって選ぶことが大事です。
日本茶の栽培面積は全国で約36,000ha
荒茶生産量は75,200t (令和5年度 ※農林水産省「作物統計」)
そのほとんどを静岡県と鹿児島県で占めています。
栽培面積は静岡県で約37%、鹿児島県で約23%
収穫量は静岡県で約36% 鹿児島県で約35%にも及びます。
二県合わせると栽培面積は約60%、生産量は約71%です。
他主要産地としては、三重県・宮崎県・京都府・福岡県・熊本県・埼玉県で80~90%の栽培面積・生産量を、占めています。
他、東北以北以外はほとんどの都府県で栽培・製造が行われています。
産地によって気候や土壌の違いがあり、また嗜好の違いからも各特色があると言えます。
生産量は右肩下がりに減少しており、より嗜好性の高いお茶や粉末・ペットボトルの需要が増してきています。
最終消費に合わせた栽培・製造が求められてきました。
日本の煎茶は特に旨味と鮮度のある香りを残して製造することに重きを置いています。
その一番の特徴は【蒸して】【揉んで】乾燥させるところにあります。
中国にも緑茶は存在していますが、そちらは主に【釜で炒って】【揉んで】乾燥させる物です。
【蒸す】事は日本製の緑茶として大変特徴的なポイントです。
必要最低限の熱で茶の酸化酵素の活性を止めることと言えるかも知れません。沸騰し気化した水=水蒸気を生葉に当てることによって水蒸気が冷やされ、液体=水に変わります。その時に放出する凝縮潜熱(気化熱の逆と考えてもいいと思います)によって生葉に熱が通ります。この工程のことを蒸熱(じょうねつ)と言います。
蒸された葉は自発的な(呼吸としての)酸化が進まなくなりますので、緑色を保ったまま次の工程へ進むことが出来る様になります。この後は揉みながら熱風を当てることによって内在する水分を効率よく飛ばしていきます。
回転するドラムの側面に押しつけるようなバネがあり、その圧力によって葉の細胞の内側にある水分を押し出し、出てきた水分にバーナーで温めた風を当てることによって乾燥させていきます。この工程を【粗柔】と呼びます。
このとき上乾きさせないことと水分を押し出しすぎてぐしゃぐしゃにならないように注意する必要があります。押し出される水分と乾燥する水分が一定になる事を恒率乾燥といい、この状態を維持することを目指します。
工程を進めていくと茎部と葉部で水分量が異なってきます。茎を柔らかくし成分を押し出し、葉をねじり込むことを目的に、熱風を与えずに圧力を掛けて揉む工程に入ります。これを【揉捻】といいます。
ならされたお茶は再びバネと熱風によって乾燥を進められます。この工程が【中揉】となり、揉捻で平均化された水分が再び押し出されていきます。
ここから仕上がりの形状や色沢にも影響が大きい工程になっていきます。水分量を減らし、最終の揉み工程に移ります。
【精揉】という唯一の直火の工程になります。葉の方向を揃え、重りにより重量を掛けながら細く撚っていく工程です。製造者の個性を一番表現しやすい工程とも言えます。細く撚れ艶があり、製造されたお茶がどのような個性を持つかを意識して作業されます。この工程には絶対的な正解がなく、職人技に任せている部分も多分にあります。
精揉が終わったお茶を乾燥機に入れ、最終乾燥を進め、これでようやく荒茶が完成します。
あとは大海(たいかい・だいかい)袋にいれ競売や相対取引にだされます。
全行程含めて、おおよそ4時間程度で完成します。一度に機械に投入できる量も限られてくるので、常に連続で稼働しています。収穫後速やかな製茶が必要なので、新茶時期は夜を徹して作られることが多いです。
お茶は大きく分けて三つの業態があります。
栽培から収穫・製茶までを行う農家。
農家が製茶した荒茶を仕入れ、ブレンド・精撰し最終商品を製造する製茶問屋(せいちゃどんや)。
製茶問屋が製造したお茶を仕入れ、ブランディング、袋詰め、店頭販売する小売店。
全ての機能を持つ場合もありますし、一つあるいは二つの機能しか持たない場合もあります。
特に静岡は全国から荒茶を仕入れ、精撰する問屋が多く存在する集散地にもなっています。福岡の八女など、小さな産地では地元の荒茶をメインに仕入れ産地としてのお茶を卸しに出す形態が多いです。
製造された荒茶は各産地にもよりますが、茶市場に集められそこで取引が行われます。各問屋が見本となる茶を観て値段を決定します。一番高い値をつけた問屋が購入することができる競売ですので、ここで市場価格が形成されます。
相対(あいたい)と呼ばれる農家と問屋が直接行う取引もありますが、現在は競売取引が主流です。オープンな場で交わされた取引なので、品質と価格の正当性が高くなります。
製茶問屋にて精撰加工されたお茶は荒茶から仕上げ茶と呼び方が変わります。仕上げ茶は各グレードがつけられて小売店へ卸されていきます。
小売店はお客様の要望に合わせて各種お茶を仕入れ、伝わる為のパッケージと適正な価格で町で流通し皆様の手にお茶が届くことになります。
製茶問屋が行っている仕上について、なかなか伝わることは多くありません。農家が製茶したお茶を仕上げるとはどういうことか説明します。
農家が製茶したお茶は荒茶と呼ばれ、そのまま急須に入れて飲むのに最適な状態ではありません。粉や茎が多く混ざり、最終乾燥も終えていないので青臭さがあります。
荒茶完成時はお茶の水分含有率は5%以下の状態になっています。その水分を3%以下まで引き下げる為に火入れ(ひいれ)を行います。これは茶の青臭さを抜くことと、芳香、滋味の引き上げが見込めます。これは商品差別化の為に非常に重要な要素で、火入れによって商品の特性が決まると言っても過言ではないかも知れません。製茶問屋の色がここであらわれます。
適正な風を当てることによって、軽い部分を取り外す作業を唐箕(とうみ)といいます。風力選別機とも言います。荒茶に混ざっている軽い部分を粉と呼び、茶の味にざらつきが出てしまう要素になります。製茶によって発生した茎の皮部や葉脈、葉の破砕した物がこれらにあたります。
お茶の栽培・製造・特性を知ることにより、お茶を淹れる事がより理解できます。
品種・土壌・肥料・日当たり・標高・気温・降水量・収穫のタイミング・蒸し・揉み・選別・火入れ・ブレンドなど、お茶の香味を左右する要素は山ほどあります。
同じ香味のお茶はこの世に二つとありません。しかし、同じような味わいのものはたくさんあります。
淹れようとしているお茶の葉がどのようなものなのか、そしてどの部分を引き出して楽しみたいのか・提供したいのか、適切にお茶を淹れられる人のことを、当店では【淹師(えんし)】と名付けました。
・飲食店(カフェ・レストラン・料亭・bar)へのメニュー提案、トレーニング
・小売販売店への技術指導
・イベント、パフォーマンスの請負・提案
・普及活動
・講演、セミナー、ワークショップ講師
・店舗での日本茶ドリンク提供の専門家
【淹師】が活躍できる場はたくさんあります。そして、これから活躍の場が増えることが予測されます。
特に海外需要も高まり、専門知識を有した海外販売店やファンも増えてきました。
既存の教科書通りの淹れ方を伝えるだけではなく、ニーズに合わせた提案を行う為にはお茶に対する様々な知識が必要です。
当店で提唱する淹師は、【正しい淹れ方】ではなく、【ニーズに応える淹れ方】が行えることを目指します。【日本茶塾】や【蘊-on-日本茶専門店】を通してお伝えしています。
略歴
1989年3月13日 山梨県甲府市生まれ。
東京工科大学メディア学部を専攻し、デジタル制作に依る。
東京リスマチック株式会社へ入社。
・DTP オペレータ、デザイナー、印刷オペレータ業務。
株式会社キャドセンターへ出向。
・3DCG パースの製作、モデリングを主に担当。
株式会社星野製茶園へ入社。
・工場、営業、農作業、販売など従事。
2022年 蘊- o n - 日本茶専門店。
・個人事業として開業。
・日本茶の販売とともに、日本茶に関する商品開発コンサルタントや提供のトレーニング業務を行う。
2023年 福岡市中央区六本松に実店舗オープン。
2024年 福岡市中央区六本松店閉店
2025年 福岡市城南区友岡にて移転オープン予定